白を裏打ちするとリスクが上がります。

白を裏打ちすると、インク層を通過した日射熱が反射され、
再びインクを通過して、日射熱が再び吸収されます。
この結果、インクの日射吸収率は1.5倍となる可能性もあります。

白色の光学的な意味

 これまで、色の吸収についていろいろと調べてきましたが、一つだけ取り扱っていない色があります。それは白色です。

 前の2ページで行った色の分析は、透明なフィルムに印刷して反射率や透過率を測定し、そこからインク自体の吸収率を調べることで分析を進めていました。ですが、プリンターに ” 白 ” を表現する機能はありません。色設定を ” 白 ” にして印刷すると、インクは全く吐出されず、透明なフィルムが残るばかりです。

 そこでまず、白い紙について調べてみました。この白い紙は充分な厚みがあって、光はほぼ透過していません。なので反射率だけを調べてみました。なお透過しないということは、100%ー反射率=吸収率ということになります。測定の結果、2000nm以上の長波長領域を除くと、多少の凸凹はあるにせよ、ほぼ全波長領域で反射率90%、吸収率10%であることがわかりました。

 まず特定の波長で大きな吸収がないということは、少なくとも無色彩であることは間違いありません。その上で、吸収率が低いということは黒ではないことを意味しますが、要するに、全波長領域で吸収がないこと=プリンターの設定上での白と読み解くことができます。だから透明フィルムに白を印刷しようとしても、『 白=吸収がないこと 』なので透明になってしまうのです。

・・・自分でお話していて、なんだかよくわからなくなってきました(笑)。

 なので色の本来の考え方に戻って整理してましょう。太陽の光は多少黄色いかもしれませんが、ほぼ白く見えますよね。これは可視光領域の光が太陽からまんべんなく、ほぼ同じ量で届いているからと考えることができます。逆に赤く燃える薪ストーブであれば赤い光を集中して、青いガスバーナーであれば青い光を集中して出していると考えることができます。本来色というのは、見えているものからどんな波長スペクトルの光たちが放たれているか?によって決まるものなのです。

 では、色のついた透明フィルム越しで太陽を見てみるとどうなるでしょうか?簡単ですよね。赤い透明フィルム越しに見た太陽は赤く、青いフィルム越しに見た太陽は青く見えます。これは赤いフィルムは赤の補色にあたる緑色の光を吸収し、赤い光だけを通すからです。青いフィルムは青の補色にあたる橙色の吸収しているのです。

 これと同じで、プリンターのインクは、表現したい色の補色関係にある光を選んで吸収させることで、目的の色を表現していることになります。そして白とは本来、全ての波長領域で同じ量で光っているわけですから、インクとしてはどの波長の光も吸収してはいけないということになるわけで、だからプリンターは基本的に ” 白=透明 ” と考えるわけです。

 これで透明なフィルムに印刷した場合の話は大体理解できました。では次に、光を透過しない紙に印刷する場合を考えてみましょう。例えば黒い紙にインクで印刷する場合、その黒い色が濃い黒であればあるほど印刷は何も見えなくなるでしょう。ですが白い紙に印刷すれば、その白さが鮮やかであるほど印刷した色もくっきりとみることができます。この差は何でしょうか?実はこれ、印刷する媒体が光を反射しているかどうかで決まってきます。

 前のページですでに、黒は全波長領域の光を吸収するとご説明しました。こんな黒い紙を太陽の下で見たとき、太陽の光が紙にあたっても黒い色が太陽の光を全て吸収してしまい、紙から太陽の白い光は反射されません。ところが白い紙は、先ほどのデータが示すように全波長領域でまんべんなく、かつ高い反射率で光を反射しています。そして私たちは、その紙から全波長域でまんべんなく反射した光を見て、白く感じているわけです。白い紙の上に置かれたインクは、この紙から反射された白い光の中で一部の光だけを選んで通過させるので、紙に色がついたように見えるわけです。だから人間の目から見れば ” 白=全反射 ” であり、プリンターはそれを邪魔したくないので ” 白=透明( 補色を吸収しない )” となるわけです。

金属の全反射と白の全反射の違い

 少し話を脱線させますね。先ほど、” 白=全反射 ” とまとめました。でも全反射の代表例と言えば、ミラーですよね。ミラーと白い紙では、見た目はとても同じようには見えません。果たして ” 白=全反射 ” ってホント?と悩んでしまいます。実は金属の反射と白の反射の違い、それは、鏡面反射( 正反射 )しているか、拡散反射( 乱反射 )しているかの違いとなります。

 金属表面では光は鏡面反射します。鏡面反射では反射の法則が成り立ち、入射角と反射角を等しくなります。要は斜め30度から当たった光は、そのまま反対の斜め30度で反射していくことになります。

 これに対して白い表面では光は拡散反射します。白い紙の場合では、紙の表面をよく見るととても激しく凸凹していますので、紙にあたった光の反射は、光の入射角に関係なく、あちらこちらの方向に同程度の強さの光を反射しています。

 印刷物の素材としては、散乱反射する白い紙は非常に好都合です。だってどの方角からから光が当たっても全方向に反射するわけですから、とても見やすい印刷媒体になります。金属だと、光の当たった方向のちょうど反対側は眩しくてしかたありませんよね。

ガラス装飾フィルムで白を裏打ちすると?

 ガラス装飾フィルムは通常、透明なフィルムを使用します。これは、フィルムは窓ガラス全体に施工するのに対し、装飾印刷部分は一部であって、その他の部分は透明にして窓ガラスの向こう側が見えるようにしたいためです。ただこの場合、装飾部( 印刷部 )がどうしても半透明になってしまうため、装飾デザインが良くわからなくなってしまうことがあります。こんなとき、インクを乗せた印刷部分だけさらに白色を重ねて印刷して不透明にし、装飾デザインが良く見える様に工夫することがあります。これを白の裏打ちと言います。” 白の ” というくらいですから、選択肢としては ” 黒の ” 裏打ちや ” 金属光沢の ” 裏打ちも選択肢としてはあり得るのでしょうが、ここでは ” 白の ” 裏打ちについて考えてみたいと思います。

 先ほどの説明で、” 白とはすなわち拡散した全反射の状態である ” ことがわかりました。とすると、透明な装飾フィルムで白の裏打ちをするということは、例えばガラスにあたった日光が、ガラス、フィルム、印刷面を通過して、白の裏打ちで全反射し、再び印刷面、フィルム、ガラスを通過して、私たちの目に届くことになります。

 あれ?同じ光の強度ではないと思いますが、印刷面を光が2回通過しますよね?するとこの印刷物の日射吸収率はまた変わるんじゃないでしょうか?早速実験してみました。

 検証の結果、やはり白の裏打ちを行うことで、インクの日射吸収率が急上昇することがわかりました。それもそのはず。仮に紙の散乱反射率が100%だとすると、インク層の厚みが往復分で2倍になったようなものです。光の吸収はランベルト・ベールの法則に従うので、厚み( この法則では光路長と言います )が2倍になれば吸光度( 吸収率の対数 )も2倍になります。だから日射吸収率も、2倍になるわけではありませんが、確実に増加します。

 あ、上のイラストを見て、白は拡散反射じゃないのか?と気づいた方、鋭いです!実際は裏打面で光は拡散反射していますから、侵入する時の光路長と反射する時の光路長は必ずしも一致しません。ここでは、散乱反射した光の全ての光路長の平均値が正反射した光の光路長とほぼ一致するだろうという仮定で考えています。なので、先の説明は厳密には正しくないかもしれません。でも大きく的外れではないと考えています。

 ちなみにこの傾向は、白いフィルムに印刷したものをガラスに貼る場合も基本的には同じと考えて問題ないと思います。金属光沢の裏打ちをした場合も、金属光沢に色がついてない限り、あまり差異はないと思います。では黒の裏打ちだったら?

 裏打ちが黒の場合は、裏打面からの反射がない代わりに、インク面を通過した日射がほとんど全て裏打ちで吸収されると考えればいいかと思います。ただ黒を裏打ちするケースって多分、インク装飾部分もかなり濃い色になっていたりして、裏打ち面までほとんど光が届いていないケースだと思われます。こんな場合は、あまり裏打ちの影響は考えなくてもいいケースになると思います。

装飾フィルムでガラスが熱割れしそうなときの対策は?

 これまでの検証結果をまとめると、インクを2種類以上使う色は、日射吸収率が上がりやすく、特に明るさを落とした結果、黒インクが追加されると特に吸収率が上昇することがわかりました。でも、よほど濃色系の色を配色しない限り50%を超えることはなさそうで、よほど条件と運が悪くない限り、ガラスが熱割れすることはなさそうです。

 ところが装飾デザインを鮮やかにしようとして白の裏打ちを行うと話が変わってきそうです。白の裏打ちはデザインの色を明瞭にできる分、日射吸収率も急激に上昇し、場合によっては白裏打ちする前の2倍近くまで上昇させますので、特に黒ではない色であってもその日射吸収率も容易に50%を超えてくる可能性があります。これが装飾フィルムで熱割れを引き起こしてしまう原因だと思われます。

 ということは、白打ちをするのをやめれば、あるいはインク自体の日射吸収率が例えば25%を超えない様に色使いに気を配れば、それだけで熱割れするリスクを回避できるということです。

 でも、せっかく装飾フィルムで窓ガラスをきれいに飾るのですから、そんなデザイン上の不自由からは解放されたいですよね。実は装飾フィルムの日射吸収率が危険なほど高まってしまった場合の対策法もあります。

 装飾フィルムの日射吸収率が高くなってしまい、日射の影響でガラスが熱割れしてしまうのであれば、例えば野外側にひさしやすだれを設置して、窓ガラスに日射が強く当たらない様に工夫することも対策の一つです。

 でも、そんな対策が難しい時は、一部の特別な日射調整フィルムが頼りになります。日射吸収率が高い装飾フィルムをガラスに施工する場合は、最低限、次の4つの条件を満たすウィンドウフィルムを外貼り施工する解決策があります

 iQUE73FGX の外貼工法であればガラスの熱割れリスクを低下させながら、日射吸収率は60~70%に及ぶ可能性がある着色ガラスへの施工が可能です。

 ただ、もちろん装飾フィルムの日射吸収率を詳しく調べ上げ、緻密な熱割れれリスクを予測しながら行う必要がある対策であることは言うまでもありません。これも、iQUEフィルム を良く知り、熱割れリスクにも詳しくて、装飾ガラスの熱割れ事故を何とか回避したいといつも考えている私たちだからこそ、様々な提案ができるようになりました。