着色ガラスはナゼ熱割れしやすいの?
着色ガラスが熱割れしやすいのは、
ガラス自身の日射吸収率が大きいからです。
フィルムを貼付するためには
ガラスにあたる日射量を減らす対策が重要です。
着色ガラスはナゼ熱割れしやすいの?
きちんと遮熱対策したはずの窓ガラスの窓際がやっぱり暑い。最近、このような相談をよく承ります。これにもちゃんと理由があります。一般的な熱反ガラス、着色ガラスの特性を改めて確認してみましょう( 右表 )。
熱線反射ガラスは、特に高性能をアピールする遮蔽係数の小さなものほど、実は日射の反射率よりも吸収率の方が格段に大きいことがわかります。つまり、このガラスはそれ自体、太陽光を浴びるととても熱くなる可能性が高いのです。熱くなったガラスは、赤外線を再放射します。つまり “ 火照る ” ため、期待した通りに涼しくならない可能性が高いのです。
日射調整型のウィンドウフィルムも仕様によっては、その再放射された赤外線( 輻射熱 )でも吸収したり、反射したりすることができますが、火照る熱反ガラスを涼しくしようとすると難しくなります。その原因は二つ。一つは、吸収タイプであれ反射タイプであれ、室内側に施工しても、ガラスが熱くなることに変わりがないので意味がない、あるいはかえって悪化するかもしれないこと、もう一つは、ガラスがより熱くなってしまうと、熱割れを引き起こす危険が高まることにあります。もっとも本質的な原因は同じで、要はガラスがより熱くなってしまわない様にできるかどうかが、成功のカギになります。
板ガラスの温度(中心温度)は、次の式で予測することができます。
Tg = 0.041 × ( 日射量:I × 日射吸収率:A + 15.1 × 外気温:TO + 9.2 × 室温:TI )
例えば、真夏の西日を想定します。外気温:TO=35℃、室温:TI=26℃の環境下で、日差しの強さは600W/㎡に及ぶことも考えられます。するとその時のガラスの温度Tgは、Tg=24.6 × 日射吸収率:A+31.5 となります。日射吸収率が65%の熱反ガラスの場合、そのガラスの温度は47℃を超える可能性があるわけです。
ここに様々なウィンドウフィルムを施工してみます。いずれも優れた遮蔽係数を誇る製品ですので、計算上の遮熱効果は非常に優秀です。ところが想定されるガラスの温度を見てみると、ほとんどのウィンドウフィルムが、窓の温度をかえって高めてしまうことになります。もし、熱反ガラスを熱く感じる原因が、ガラスの火照り感であったなら、ウィンドウフィルムの施工は逆効果となってしまうかもしれません。
より深刻な問題は、ガラスの温度が上昇するということは、熱割れする危険性が高まるという点です。例えばこの窓が一般的なオフィスに設置されている厚み6mm・面積3㎡の直付けサッシ窓であったとします。その時の危険係数:Kは8.75となるかもしれません。するとこのガラスが元々高い日射吸収率をもっていますから、フィルムを施工していない施工前の状態でさえ、発生する熱応力はすでに、許容値( 180kgf/㎠ )の95%に相当する171kgf/㎠まで上昇してしまう可能性があります。そしてガラスの温度が僅かでも上昇してしまうウィンドウフィルム施工の場合は、いずれのケースでも発生する熱応力が180kgf/㎠を超えてしまい、熱割れを引き起こす危険性が発生してしまいます。
この様な背景から、一般的に『 ウィンドウフィルムは着色ガラスには貼れない 』『 着色ガラスにフィルムを貼ると必ず熱割れする 』という考え方が広まったと考えられます。
着色ガラスにフィルムを貼る
では、そんな着色ガラスの遮熱化をしたい場合はどうすればいいのか?普通は、遮光・遮熱カーテンやブラインドをきちんとすることを思いつくかもしれません。ただ着色ガラスはすでに熱割れしやすい状態にあるかもしれませんので、ガラスの周りに熱気がたまりそうな対策は、熱割れリスクをさらに高めてしまうかもしれません。対策は逆側で、むしろ野外側にひさしやすだれを設置して、窓ガラスに日射が強く当たらない様に工夫すべきです。
でも、なんか矛盾してますよね?日射対策で導入したはずの日射吸収ガラスや日射反射ガラスの熱割れリスクを下げるために、ガラスに日影を作らないといけないっていうのも。そんな時には、一部の特別な日射調整フィルムが頼りになります。
このような、すでに日射吸収率が高い着色系のガラスにウィンドウフィルムを施工する場合は、最低限、次の4つの条件を満たすウィンドウフィルムを選択する必要があると考えます。
(1) フィルムは外貼り可能な仕様であること
(2) フィルム自身の日射透過率が低いこと
(3) フィルム自身の日射吸収率が低いこと
(4)フィルムが耐候劣化に優れ、変色が生じないこと
(1)と(2)の目的は、ともかく熱反ガラスの温度が上がらないように、日射調整フィルムを外から貼付してガラスに日射があたらないようにすることにあります。しかしながら、フィルム自体が日射を吸収してしまっては意味がありませんので、同時に(3)の性能も兼ね備える必要があります。そして、設計されたその性能が長期間にわたって変わらない高い耐久性も求められます。
ただ、着色系のガラスに日射調整フィルムを貼る場合、外貼仕様であれば何でもいいわけというわけでもありません。具体的に次の3種類の外貼仕様の日射調整フィルムで効果を予測してみましょう。
右のグラフは、0~ 100%の様々な日射吸収率を持つガラス基材の外側に iQUE73FGX 、比較2、比較6の外貼型日射調整フィルムを施工した時の、施工後のガラスの日射吸収率の計算値になります。
グラフの見方ですが、それぞれの計算結果を表す、青線、緑線、赤線が、黒の点線を下回っていれば、フィルムを外貼施工することによってガラスの日射吸収率が低下している、つまりガラスの熱割れリスクが改善されていることを示します。逆に上回っている場合は、むしろ熱割れリスクが高くなっていることを示します。
グラフを見てみると、いずれの外貼フィルムも、ガラスの日射吸収率が低い時は逆効果で、むしろ熱割れするリスクが高まっていますが、ガラスの日射吸収率が高くなるにつれてその差が小さくなり、いずれ逆転して熱割れリスクを下げる様になることがわかります。
そしてこのグラフで注目すべきポイントは、基材の日射吸収率が何%以上で逆転するか?という点になります。例えば 、iQUE73FGX の外貼工法では、基材の日射吸収率が50%を超えてくると熱割れリスクを下げる効果が期待できるのに対し、比較2の外貼工法では68%以上、比較6の外貼工法では72%を超えない限り、その効果が期待できないことになります。
先ほど、日差しが当たるとガラスが火照り、暑さを感じるかもしれない代表例としてあげていた最近の日射吸収ガラス、高性能日射反射ガラスの日射吸収率は60~70%に及ぶ可能性があることを提示していました。ということは、 iQUE73FGX の外貼工法であればガラスの熱割れリスクを低下させながら、ガラスの火照り感も緩和することができると期待できるのに対し、比較2や比較6の外貼工法では、これらの改善効果は期待できず、むしろ悪化する可能性さえ懸念されることが危惧されます。
この様に、着色系のガラスの遮熱改善を目的に日射調整を外貼施工する場合は、フィルム自身の日射透過率が充分低いこと、そしてフィルム自身の日射吸収率が充分低いことが非常に重要であり、材料選定で見逃せないポイントになります。
iQUEフィルムで改修を行うとしたら?
iQUEフィルムでは、光反射型遮熱フィルムに分類される 18A/OSW と、選択透過型の 73FGX の2種類の外貼り可能な仕様が準備されています。ただ、光反射型遮熱フィルムは、確かに日射熱も良く反射し、日射吸収率も高くないので、着色ガラスの外貼工法で十分使用できる特性をしています。ですが、濃色のガラスにミラーフィルムを施工すると、そのミラー感が強く強調されてしまい、もはやガラスなのか鏡なのかわからない外観になってしまいます。そんな理由から 私たち iPAST では、着色ガラスの遮熱改善ができる唯一の外貼型日射調整フィルムとして iQUE73FGX を推奨させて頂いています。
日射透過率39%、日射吸収率31%の iQUE73FGX は、他製品と比較して日射透過率・日射吸収率が低いこともあって、着色ガラスの外貼施工用日射調整フィルムとして好適であり、日射吸収率が60~70%と高い近年の日射吸収ガラス、高性能日射反射ガラスの遮熱改善・熱割れリスク改善で効果が期待できることは先ほどの検討の通りです。またミラーフィルムを施工した場合と異なり、外観上の色調やミラー感もほとんど変化なく、自然な仕上がりが期待できることも大きな特徴の一つとして好評です。しかも、高い耐候性も自慢の iQUE73FGX を私たち iPAST に施工までご依頼いただければ、保証期間中に発生した製品起因の不具合は私たちで無償交換させて頂く5年間の施工保証付きで、安心です。
これも、iQUEフィルム を良く知り、熱割れリスクにも詳しくて、着色ガラスの遮熱改修を何とかしたいといつも考えている私たちだからこそ、こんな提案ができるのかもしれませんね。